<「この本を読め]と非日本人から勧められる日の来ることを>
三輪芳朗
J.Mark.Ramseyer
大平正芳記念賞を賜り真に光栄です。タイトルからもおわかりのように、日本経済、より広く日本に関する「常識」と激しく衝突する「挑戦的」主張に満ちた書物です。大平賞の授与は、われわれの喜びであり、われわれの主張に賛同する人達に対する励ましです。選定委員会と財団の皆様に深く感謝し深い敬意を表します。
若手研究者に与えられるものだと観念しておりましたから、多少意外な気もします。われわれの分野では研究成果は専門学会誌に発表するのが標準的です。過去10年間に数多く発表した論文の「うわずみ」が本書だと考えれば、かなり前の仕事です。それぞれの先行研究が共同研究に反映したと考えれば、源泉はさらに遡ります。若い時期の研究に対して与えられ、ここで止まるなという励ましだと考えたいと思います。
国、地域、会社のいずれを問わず、それぞれの「社会」は、自らの「社会」を特別な存在と考え、特異・特殊な側面を強調する傾向があります。戦前(恐らくは明治維新以前)から、日本ではこの傾向が強かったようです。外国人(とりわけ、欧米人)の日本(を含む欧米の外側)は欧米の「社会」とは違うという偏見と異なるものを求める好奇心がこれと強い共鳴作用を起こしました。数十年間にわたって、日本(社会、経済、企業、人)特殊論が日本の内外で支配的でした。
日本特殊論を象徴するのが「政府主導型経済発展」と「系列」に象徴される企業間関係(日本的企業システム)です。いずれも多くのキーワードで彩られた曖昧な主張です。数十年間にわたって、日本特殊論の各部品の内容の明確化と妥当性の確認・否認を内容とする研究成果を公表してきた2人が10年前に共同作業に移行しました。とりわけ英語で書いた論文がかなり広範な読者を獲得した段階で、より広範な読者を想定して書いた「うわずみ」です。
少なからぬ日本人が、「まだそんなことを言っているのか。あの本を読め・・・」と非日本人から勧められる日の到来がわれわれの願いです。本賞の受賞がその日の到来を早めると確信します。ありがとうございました。 |
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