<地方から見た中国の改革開放>

 三宅 康之
 この度は、拙著を「第23回大平正芳記念賞」の受賞作に選定して頂き、まことに光栄に存じております。大平正芳記念賞運営委員会、選定委員会の先生方ならびに貴財団関係者の方々に厚くお礼申し上げます。
本書の原点は、学部生時代の1990年夏に敢行した中国周遊の旅にあります。行く先々で風土・環境が相当異なるにもかかわらず、共通の建築様式の駅舎や政府機関が建てられていることに、中国は「一つであって、一つでない」ことを鮮烈に印象づけられました。
その後、研究生活に入っても、この印象がインスピレーションの源泉となりました。一つには、安易に「中国が」と一括りに語ることの危険性を意識させてくれました。第二に、多様な地方を内包した中国の実態には、各地の実情を反映する経済問題から接近するのが適していると判断する基準となりました。第三に、巨大国家を統治する難しさと、それが歴史的難題であったことにも思い至らせてくれました。
 これらの関心が交差して、改革開放期の経済改革をケースとする中央地方の政治経済的関係の解明に研究の焦点が定まりました。研究を始めた頃は、中央と地方は、公式の中央集権制度どおり、支配従属関係にあるとされていました。この通説に疑問を抱き、地方政府の視点に立脚した研究を進めた結果、公式制度通りではなく実態としては相互依存的な関係にあるとの中間結論にいったん至りました。では、なぜ制度と実態のギャップが大きいのか、と疑問はさらに深まりました。本書の最終結論は、中国は統一した、強い国家でなければならないという国家理念と、巨大国家を中央集権的に経営することの限界という現実的要請のギャップを反映しているため、というものです。
中国研究は奥が深く、取り組むべき課題はまだまだ数多くあります。今回の受賞を励みに、今後は、アジア・太平洋地域をはじめとする中国の対外関係にも研究の幅を広げていく所存です。