<中・日・米三国のナショナリズムの変容課程を追って>

 馬 暁華

 本研究課題の萌芽となるような問題意識が育まれたのは、長年にわたる日本・米国での留学生活、および研究・教育活動に受けた有益な異文化体験の感動とともに得られたものであります。その意味で、本研究助成を受けることができたのは、本当に多くの方々のご指導とご支援の賜物だと感謝の気持ちでいっぱいです。
中国、日本、米国三国が友好な協力関係を建設的に発展させることは、アジア・太平洋の安定と発展とのみならず、21世紀の国際システム全体の課題としてきわめて重要であります。しかし、近年「歴史問題」をめぐる中・日・米三国の軋轢をみると、戦争の傷痕は今なお人々のこころに残されています。そこでは、19世紀中葉以後、東アジアが近代的な国際関係のなかに次第に組み込まれてゆく過程で遭遇した様々な歴史的体験、特に過去の戦争体験を、中・日・米三国がどのように解釈し、戦後の国際政治の変動によってどのように意味づけているかは私の研究課題であります。具体的には、中・日・米三国の戦争の記憶のあり方を戦争博物館の設立と展示を通じて検証すると同時に、中・日・米三国の戦争の記憶が、戦後アジア・太平洋地域における国際関係の変容にどのような影響を与えていたのを分析し、三国のナショナリズムの変容過程を明かにすることを目的としています。
過去の戦争体験をどのように歴史的に認識し、次の世代に伝えていくかは、中国と日本を始めとするアジア・太平洋地域の国々の若い世代が、共通の歴史認識を求めるために、21世紀のアジア・太平洋地域に生きる上に解決しておくべき不可欠な課題であると痛感しています。そのため、私のような「抗日」と「反米」というイデオロギーの世界で生れた者にとっては、過去のそれぞれの異なった歴史や記憶を生きてきた世界各国の人々とどのようにして自民族中心的な傾向から脱却し、共通の歴史認識を有し、相互に交流させていくことができるのかという課題に迫られています。教育の現場で立っている私は国の枠を超える共通の歴史認識および相互理解の架け橋に努力を払う責任を感じ続けています。
最後に、貴財団の関係各位、選考委員会の先生方々、および長年の海外生活で私を支えてくれた全ての人々に深くお礼を申し上げます。長い間のご支援をどうもありがとうございます。